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「エイプリル何とかをネタにしないのか?」



「それじゃーありきたりかな、って」



「春っていうのも何かありきたりな気もするんだが」



「春ねぇ……この時期は生暖かいから、イマイチやる気が出ねぇんだよな」

「お前の場合は年がら年中やる気ねーだろうが!」



「まぁ、いいじゃないか。どうだい? 花見でもしてみるかね」


「花見! いいんじゃねーか?」



「そうだね、おれも賛成だな」



「丁度僕の塔の近くに、キレイな花が咲いている良い場所があるんだ。そこでどうだい?」



「あ、いいですね~」



「ま、おれはどこでもいいぜ。適当について行ってやるから勝手に話を進めといてくれよ」



「おいコラ、寝るな馬鹿」



「じゃあ、皆目を瞑っていてくれたまえ。転移魔法で全員はこぶからね」







こうして、一行は大魔導師の魔塔近くの穴場で花見をすることになった。

しかし、彼らはすっかり忘れていた。

大魔導師たる青年の「綺麗」の感覚が、常人のそれと同一である確率が限りなく低いということを……







「どうだい? 美しいものだろう」



「あ、ああああれのどこが綺麗なんだ!?」



「……見ようによっては、キレイかも。あのズラッと同じ長さに並んだ牙とか」



「バカヤロー! ありゃどー見ても人食い植物だぞ!」



「しかもすごい数……」



「おい、俺たちを騙したな!? さてはこの機会をいいことに全員実験台にしてやろうとか思ったんだろう!?」



「心外だね。君たちには彼らの美しさがわからないのかい?」



「ちょっと……分からないかも……」



「なぁ、あいつらこっち見てんぞ」



「しかも向ってきてるな。植物のくせに歩けるたぁ、なかなかやるじゃねぇの」



「まぁ、僕が改良したからね」



「えっ」



「この前暇だったから、ちょっと実験で残った薬を肥料に与えてみたんだ」



「……」



「……」



「なかなかの傑作になったと我ながら思うよ。多分リデルのキメラ一体や二体くらいならラクに屠れるんじゃないかな?」



「信じらんねー。こいつ本当に人間?」



「ははは、残念ながら人間だよ」



「おい、あれ倒しちまってもいいか? 久々に遊ばせてくれよ」



「グレイスさん……今の話聞いてましたか……」



「構わないよ。もうデータはとってあるからね」



「そうか。じゃ、遠慮なく……おい、お前らも付き合えよな。一人で楽しむのも勿体ねぇしよ」



(……こういう時だけやる気満々なんだから……)



「イヤだ! 俺はまだ死にたくねー! 帰りたい!」



「大丈夫さ。死んだら僕が死霊術で生き返らせてあげよう」



「やめてくれ」「やめてください」
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